心と身体

身体に不調があった時、それは「体」が原因でしょうか。

例えば胃が痛いという症状があったとして、原因が「食べ過ぎ」「飲み過ぎ」なら、確かに肉体が原因かもしれません。

でも、圧倒的にヘルシーな生活を送っているにも関わらず、胃腸の調子が悪いという人も少なくありません。そんなときに「ストレスが原因なのかもしれない」と、実は心の問題であったということに気づくのです。

21世紀に入り20年弱が過ぎた今、このような「心と身体がつながっている」という認識が以前よりも深まって来たように感じます。心が健やかな状態を取り戻せば、身体の健康もある程度維持できるとは思います。

そして心身の健康は、自分の人生を思うがままに全うするための必須条件です。

そこで、知っておいてほしいのが「ソマティック」という概念。

まだ聞きなれない言葉かもしれませんが、これからの心と身体の健康には欠かせない考え方です。

天気のように移り変わる「心」に目を向ける

私たちの心は実に流動的です。

女性の気分が秋の天候のようにコロコロとよく変わる様を「女心と秋の空」という言葉で表現しますが、実は元々は「男心と秋の空」という男性の愛情の移り変わりやすさを表した言葉です。

このように男女問わず、「心」は天気のように移ろうものであるということは、昔から認識されています。そして、そうした変わりやすい天気のような心に伴い、影響を受けているのが私たちの「身体」です。

脳の中で「心」が動くと、自律神経系やホルモンのバランスが変化します。その変化に応じた司令が身体の隅々まで届き、身体反応が生じます。例えば、顕著なのは「顔」の変化です。

喜怒哀楽の感情に伴った信号は顔面を構成する筋肉=表情筋へと送られ、人はそれに伴った表情を自然に作り出します。具体例としては、仕事中にも関わらず恋人からの甘いメールが届いた時は、目尻が下がり、口角がふわっと上がるのを慌ててこらえることでしょう。逆に、どんなに楽しい飲み会の場においても、緊急事態を告げる仕事のメールが届けば、眉間にシワがより、表情がこわばるのを感じるはずです。こうした「こわばり」あるいは「ゆるみ」などの影響は、表情だけでなく、身体の内側にある臓器それぞれにも起こっているのです。

もしストレスが短期間なら、思う存分遊んだり、ぐっすり寝たりするだけで発散できるかもしれません。

しかし、「責任」という大人の役割を果たそうとするこの社会では、自分が感情を抑えながら生きていることに無自覚なまま日常を送っている人が実に多いのです。そうして自分の「心」をないがしろにしていることや、その「心」が身体に与えている影響にも気づかず、ある日謎の体調不良を訴える、最悪の場合は病気を発症する、ということもあります。

我慢強く、忍耐力がある人ほど、こうした変化を無視してしまいがちな傾向があります。

「いいかげん」というよりは「良い加減」、さらに言えば適度に力を抜いた「テキトー」ができる人の方が、心と身体のバランスにおいては健康を維持しやすいといえます。また、子供は喜怒哀楽の表現が実に豊かです。周囲を気にせずこの世の終わりのように泣き喚いても、嵐が過ぎてしまえば当人はケロッとした顔でいます。そうやって上手に心の滞りを発散しているのです。

大人である以上、ある程度の自制は必要かもしれません。

しかし、真の健康のためには、「心」そして「身体」が、刻々と移り変わる存在である、ということをもう一度思い出し、丁寧に観察することから始める必要があります。

心と身体のつながり=ソマティック

「心と身体のつながり」を考えるときにキーワードとなるのが「ソマティック」です。

「ソマティック」の「ソマ(soma)」はギリシャ語で「身体」を意味します。この「ソマ」は単なる物資的な肉体を超えた、心や魂までも含む「いきいきとした身体」を表しています。仏教で言う「 身心一如 」、つまり「心と身体は不可分であり、ひとつのものの両面である」という考え方と同様であると言っても良いでしょう。

ちなみに「身体」と「体」のちがいはお分かりになりますか?

どちらの言葉を使うこともあるかと思いますが、厳密には少し違いがあります。命があるないに関わらず固体としての「ボディ」を表現する時に「体」を用いるのに対して、人間のように心や精神を内包した存在に対しては「身体」を使用することが多いようです。つまり「身体」という表記は「心身」を表しているのです。

心と身体のつながりへの注目度が増し、「ソマティック」という概念が深まっていきました。

何らかの心や身体の不調に対し、「心は心」「体は体」と分けてアプローチするのではなく、身体や感情を入り口として心に働きかける、その逆に心から身体へと働きかける、そんな総合的な健康を促すような手法が、多く生まれていったのです。

心と身体のつながりは、現代社会においてはおざなりにされがちです。身体が元気であれば、嫌がる心を無理についてこさせることもできてしまいますし、モチベーションが高い心理状態であれば、疲労感などものともせず、身体を引きずってでも物事をやり遂げようとします。でも、どんなに立派な車(身体)があっても、運転手(心)が倒れてしまったら車は動きません。

また、車体が故障していれば、運転手がどんなに頑張っても同じように車は動かず、目的地にたどり着くことはできません。

だからこそ、人生における目的を健やかに達成したいならば、時々立ち止まって「心」と「身体」がどんな状態かを冷静にチェックし、メンテナンスをしていくことが大事です。

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